Column
コラム
ファミリービジネス株式持合解消の影響とファミリーオフィスの活用
財閥解体措置、1947年の過度経済力集中排除法定、および独占禁止法制定等の影響は、1945年8月~1949年末創立のファミリービジネスにおける平均ファミリー株式保有率が平均より低い水準となっている要因となったと考えられています。1949年、1953年の独占禁止法改正を受けて株式所有規制が緩和されたことから、企業は自社株所有に近かった個人所有株式を取引先企業等安定株主にはめ込み、財閥解体後の企業集団への再編成と企業系列化を「株式持合い」という形で進めたとされています。
その後、株式の持合いは、敵対的買収を阻止、ファミリービジネスにおけるファミリーの影響力維持等のメリットがあるが、一方で、個人投資家・機関投資家の会社経営に対する影響力が弱められ、経営に対する規律が弱められる等のデメリットが指摘され、上場会社における株式持合いの解消が進められました。
日本の法制度では、持合い状況を開示させることを通じて牽制をしており、上場会社には有価証券報告書(金融証券取引法24条1項)の中で、純投資以外の目的で有する投資有価証券の開示を義務付け、コーポレートガバナンス・コードで、上場会社が上場株式を政策保有する場合には、保有株式の縮減に関する方針等政策保有に関する方針を開示し、保有の適否について適切な対応を確保するための基準を作成・開示することを求めています(コーポレートガバナンス・コード原則1-4)。
しかし、近年のメインバンク制度の弱体化、機関投資家の発言力の増大、「物言う」株主の出現等により、2002年1月に金融機関の持合い株を解消するための受け皿として銀行等保有株式取得機構が設立されたこと、2015年に導入されたコーポレートガバナンス・コードでも株式保有の狙いや合理性の説明を開示するように求められていること等から持合い解消の動きは加速しています。
このため、ファミリーとしてのファミリービジネス株数が少ないにもかかわらず、株式持合い解消により安定株主対策が脆弱になってきたファミリービジネスにおいては、ファミリーのファミリービジネスに対する影響力が弱まり、非ファミリービジネス化が進む可能性が生じると考えられます。
これらの課題を解決するために、ファミリービジネスを営むファミリーにおいては、ファミリーとしてファミリーガバナンスの意識を持ち、ファミリーとしての事業戦略、資本政策、ファミリー資産の管理・運用・承継を行うとともに、計画的に後継者を育成・承継していく取組みが求められ、その手段としてのファミリーオフィスの活用が期待されています。
ファミリーオフィスは、ファミリーの保有するファミリービジネス株式を集約管理し、ファミリーとして議決権を統一行使する役割を果たすのみならず、ファミリーとしてのファミリービジネス株保有の減少を抑制するとともに、株式持合い解消の受け皿としての役割も期待されています。
(出所)
田中亘(2020)『会社法[第2版]』東京大学出版会,p.170.
水谷公彦(2022)「日本の企業オーナーファミリーにおけるファミリービジネス株式保有に関する一考察」日本大学大学院総合社会情報研究科紀要 Vol. 23 No. 1, pp.25-36.

水谷公彦
コモンズジャパン株式会社 取締役
水谷公彦税理士事務所 代表税理士
