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コラム

ファミリーガバナンス

ファミリーガバナンス対策としての「ファミリーオフィス」の活用

 Berle and Means(1932)は、企業が成長するに際して多くの株主から資金を集める必要が生じた結果、企業規模の増大とともに株主1人あたりの持株比率は減少する分散保有となり、個々の株主の経営に対する発言力は弱まり、企業経営は専門経営者に委ねられる「所有と経営の分離」に移行すると説明しました。

 日本の企業数は、事業環境の変化、 少子化等の影響を受けた 後継者問題、 相続税を含む相続問題等の影響から年々減少しており、1999年には485万社あった企業数が、合併、M&A、廃業等により2016年においては359万社まで減少しています。日本企業の97%がファミリービジネスとされていることから、減少した企業の多くがファミリービジネスであったと考えられています。

 帝国データバンクによる「全国・後継者不在企業動向調査(2019年調査)」 によれば、2017年以降に事業承継が判明した全国約3.4万社について、先代経営者との関係性をみると、2019年度の日本の ファミリービジネスにおける ファミリーメンバーへの事業承継の割合は34.9%に達し、全項目中最も高い結果でした。しかし、2017年の41.6%と比較すると6.7%減少しており、ファミリーメンバーによる事業承継割合は減っています。一方、ファミリー外の役員・従業員等への事業承継は33.4%となり、2017年比2.3%増加しています。また、社外の専門経営者を後継者として招聘した「外部招聘」は、2019年は 8.5%と2017年比1.1%増加、M&Aによる事業売却等は、2019年は18.4%と2017年比2.5%増加しています。

 よって、少子化等の影響を受けて、今までのように「イエ」の意識を踏まえたファミリー内の承継にこだわるわけにはいかず、欧米と同じように「所有と経営の分離」形態への移行を選択せざるを得ないファミリービジネスが増えると考えられます。加えて、改訂コーポレートガバナンス・コードによる開示義務等から、株式持合いは解消の方向に向かっています。

 このため、ファミリーとしてのファミリービジネス株式数が少ないにもかかわらず、株式持合い解消により安定株主対策が脆弱になってきたファミリービジネスにおいては、ファミリーとしてファミリービジネスとの関係をどのようにするかファミリーとしての対応策が求められるようになっています。

 これらの課題を解決するために、 ファミリービジネスを営むファミリーにおいては、ファミリーとしてファミリーガバナンスの意識を持ち、ファミリーとしての事業 戦略、資本政策、ファミリー資産の管理・運用・承継を行うとともに、計画的に後継者を育成・承継していくファミリーガバナンスの取組みが求められ、その手段としてのファミリーオフィスの活用が期待されるようになっています。

 ファミリーオフィスは、ファミリーの保有するファミリービジネス株を集約管理し、議決権を統一行使する役割を果たすのみならず、ファミリーとしてのファミリービジネスに対する影響力を維持することを目的としたファミリー株主等からの株式買取りの受け皿としての役割も期待されています。また、ファミリーオフィスの活用に際しては、法制度・税制度等を踏まえた資産管理・運用を行うことで、税金としての流出を最小限に抑え、リターンを高める取組みを行うことも含めて検討されるようになってきています。

(出所)

Berle, A. and G. Means(1932) “Modern corporation and private property, ” New York: Macmillan.

中小企業庁 (編著 )『中小企業白書 2020年版』全国官報販売協同組合.

ファミリービジネス白書企画編集委員会 (編), 後藤俊夫 (監修 ), 落合康裕 (企画編集 ), 荒尾正和・西村公志 (編著 )(2018).

帝国データバンク (2019)「特別企画:全国・後継者不在企業動向調査 (2019年調査 )」帝国データバンク (2019)「特別企画:全国・後継者不在企業動向調査 (2019年調査 )(2019年 11月 15日)」帝国データバンク HP, https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p191104.pdf (閲覧日:2022年2月20日).

水谷公彦(2023)「ファミリーオフィスの海外における現状と日本での活用に関する一考察―アルケゴス事件 の影響を踏まえてー」日本貿易学会誌60,pp.21-38.

水谷公彦
コモンズジャパン株式会社 取締役
水谷公彦税理士事務所   代表税理士