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コラム
4つある「ファミリーオフィス」のタイプ別特徴
欧米やシンガポールなどアジアにおいては、ファミリービジネスを営むファミリー以外にも、事業・資産を売却した元企業経営者、財産価値の高い不動産を保有する地主等の富裕層における資産・管理等においてもファミリーオフィスが活用されています。
欧米およびアジアで活用されているファミリーオフィスには、 「シングル・ファミリーオフィス」、「マルチ・ファミリーオフィス」、「コマーシャル・ファミリーオフィス」、「エンベデッド・ファミリーオフィス」という 4つのタイプがあります。
ファミリーオフィスのタイプ別特徴
| シングル・ファミリーオフィス(SFO) | マルチ・ファミリーオフィス(MFO) | コマーシャル・ファミリーオフィス(CFO) | エンベデッド・ファミリーオフィス(EFO) | |
| 複雑性 | こじれたファミリーの問題・難解な財務課題に頻繁に取り組む | 通常はシングル・オフィスの状況ほど複雑ではない | さほど複雑でないものから極端に複雑なものまで広範囲にわたる | 個人またはファミリーによって設立された持株会社等で資産運用を行う形で用いられるインフォーマルなファミリーオフィス(個別性が強い)である |
| 管理・統制 | ファミリーオフィスを設立する主な理由である | 家族の支配を維持するコスト効率のよい方法である | 重要ではあるが、ファミリーオフィスを活用する主要因とはならない | |
| 人脈 | 投資にかかわる人材の獲得に役立つ | 他のファミリーと一緒に投資にかかわる人材の確保等、他では得られない投資商品を購入するために重要である | 役割は限られているが、見込み顧客の獲得において一定の役に立つ | |
| 資本 | 巨万の富を巧みに扱う能力は必須条件であり、存在意義となっている | シングル・ファミリーオフィスよりは柔軟性に欠ける | 各顧客の資産の構成手法に関してのみ該当する | |
| 社会貢献・フィランソロピー | ファミリーがファミリーファミリーガバナンスを意識して社会貢献・フィランソロピーを実施する手段になる | |||
出所:Prince, R. A. and H. Shaw Grove (2004), Inside the Family Office. Overland Park, KS: Wealth Management Press. (ラス・アラン・プリンス , ハンナ・ショー・グローブ (著 ), 多田斎 (監訳 ), 野村證券ファミリーオフィス研究会(訳)(2008)『ファミリーオフィス 富裕層向け財産管理の新潮流』東洋経済新報社 , 72ページ)を参考に筆者が一部修正。
ファミリーオフィスの4つのタイプのうち、 シングル・ファミリーオフィスおよびマルチ・ファミリーオフィスは、ファミリーの資産が多額であり、ファミリー内の事情が複雑な場合に用いられています。一方で、資産額が少なく、ファミリー内の事情が複雑でない場合にはコマーシャル・ファミリーオフィスまたはエンベデッド・ファミリーオフィスが用いられています。
シングル・ファミリーオフィスでは、ヘッジファンド等の機関投資家経験者等を雇用し、ファミリーの資産の管理に加え、資産運用、リスク管理、税負担の軽減等の役割を担っています。そして、マルチ・ファミリーオフィス、コマーシャル・ファミリーオフィスは複数のファミリーの資産管理・運用を担うものであり、ファミリーの集合体または資産管理会社が、ファミリーの資産・運用を信託会社、士業等に委託する形態です。一方で、エンベデッド・ファミリーオフィスは、個人またはファミリーによって設立された持株会社等において資産運用などを行う形で用いられ、比較的資産が少ないファミリービジネスにおいて用いられています。
(出所)
Prince, R. A. and H. Shaw Grove (2004), Inside the Family Office. Overland Park, KS: Wealth Management Press. (ラス・アラン・プリンス , ハンナ・ショー・グローブ (著 ), 多田斎 (監訳 ), 野村證券ファミリーオフィス研究会(訳)(2008)『ファミリーオフィス 富裕層向け財産管理の新潮流』東洋経済新報社.
水谷公彦(2023)「ファミリーオフィスの海外における現状と日本での活用に関する一考察―アルケゴス事件 の影響を踏まえてー」日本貿易学会誌 60, pp.21-38.

水谷公彦
コモンズジャパン株式会社 取締役
水谷公彦税理士事務所 代表税理士
